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【2025年最新】個人事業主の社会保険加入義務と負担額を徹底解説 | 専門家監修

【2025年最新】個人事業主の社会保険加入義務と負担額を徹底解説 | 専門家監修
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ひとり起業ラボ編集部

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近年、社会保険の加入調査が厳格化され、個人事業主の間でも「社会保険に入るべきか」という疑問が増えています。個人事業主は必ず社会保険に加入しなければならないのでしょうか?また、加入した場合の事業主負担はどの程度発生するのでしょうか?

本記事では、社会保険労務士監修のもと、個人事業主の社会保険について加入義務の有無から具体的な負担額計算、そして法人との比較まで、すべての判断材料を詳しく解説します。

個人事業主に社会保険の加入義務はあるのか?結論から解説

結論:個人事業主は原則として「常時5人以上の従業員を雇用」している場合のみ、社会保険への加入が義務付けられています。

社会保険の加入が義務付けられる条件は、法人と個人事業で大きく異なります。この違いが、事業形態を選ぶ際の重要なポイントとなることも少なくありません。

法人の場合の社会保険加入義務

  • すべての法人に加入義務あり
  • 社長1人だけの会社でも加入義務があります
  • 役員報酬が発生する取締役全員が加入対象となります
  • 例外はありません(業種による適用除外なし)

個人事業の場合の社会保険加入義務

  • 常時5人以上の従業員を雇用している場合のみ加入義務が発生
  • 事業主1人のみの場合は加入できません
  • 従業員が1〜4人の場合は、従業員の2分の1以上の同意があれば任意加入できます
  • 以下で説明する適用除外業種であれば、5人以上雇用していても加入義務がありません

このように、法人と比較して個人事業主の場合は社会保険の加入条件が緩やかです。そのため、社長一人や家族経営の小規模事業では、将来の社会保険料負担を考慮して法人ではなく個人事業を選択するケースも少なくありません。

【ポイント】「常時5人以上」とは、臨時やアルバイトではなく、継続して雇用している従業員数を指します。短期的に5人以上になっただけでは「常時」とはみなされません。

個人事業主でも社会保険適用除外となる業種一覧【2025年対応】

個人事業主で常時5人以上を雇用している場合でも、特定の業種は社会保険の適用から除外されます(強制適用除外)。この例外規定は2025年現在も有効です。

社会保険の強制適用除外となる事業(個人事業のみ)

  • 第一次産業系
    • 農業
    • 牧畜業
    • 水産養殖業
    • 漁業
  • サービス業
    • ホテル業
    • 旅館業
    • 理容業
    • 美容業
    • 娯楽業
    • スポーツ施設業
    • 保養施設等のレジャー産業
  • 専門職系
    • 法務(弁護士、会計士、税理士、社会保険労務士等)
    • コンサルタント業(一部)
  • 宗教系
    • 神社
    • 寺院
    • 教会等

【重要】適用除外となる業種であっても、法人化した場合は強制適用対象となります。例えば農業法人は社会保険加入が義務付けられています。

これらの業種は歴史的・政策的な理由から適用除外とされていますが、将来的に見直される可能性もあります。最新の情報は年金機構や社会保険労務士に確認することをお勧めします。

【図解】社会保険料の計算方法と事業主負担額の求め方

社会保険に加入すると、事業主にはどれくらいの負担が発生するのでしょうか。ここでは実際の計算方法と2025年最新の料率を用いた具体例を解説します。

社会保険料の計算方法(3ステップ)

社会保険料は主に以下のステップで計算されます。

  1. 毎年1回、「算定基礎」と呼ばれる手続きを行います
  2. 4月、5月、6月の給料の平均額(報酬月額)を算出します
  3. この報酬月額を等級表にあてはめて「標準報酬月額」を決定します
  4. 標準報酬月額に社会保険料率を乗じて保険料を計算します

標準報酬月額の等級表(抜粋)

報酬月額標準報酬月額
290,000円以上 325,000円未満310,000円
325,000円以上 360,000円未満340,000円
360,000円以上 395,000円未満380,000円

2025年最新の社会保険料率

保険の種類料率(事業主+従業員)事業主負担分
健康保険9.90%4.95%
介護保険(40歳以上)1.73%0.865%
厚生年金保険18.3%9.15%
合計約30%約15%

具体的な計算例(ステップバイステップ)

山田さん(42歳)の場合:

  • 4月給料:350,000円
  • 5月給料:300,000円
  • 6月給料:340,000円

計算手順

  1. 報酬月額の計算: (350,000 + 300,000 + 340,000) ÷ 3 = 330,000円
  2. 標準報酬月額の決定: 報酬月額330,000円 → 等級表から標準報酬月額は340,000円
  3. 社会保険料の計算(2025年4月現在の料率):
    • 健康保険料:340,000円 × 9.90% = 33,660円
    • 介護保険料:340,000円 × 1.73% = 5,882円
    • 厚生年金保険料:340,000円 × 18.3% = 62,220円
    • 合計保険料:101,762円
  4. 事業主負担額の計算
    • 101,762円 ÷ 2 = 50,881円(月額)
    • 年間で:50,881円 × 12ヶ月 = 610,572円(年額)

事業主の社会保険料負担の目安(簡易計算法)

計算を簡略化すると、社会保険料率は2025年4月現在、合計約30%で、**事業主の負担はその半分の約15%**になります。

実務上の目安としては、従業員の月給の約15%が事業主の社会保険料負担額と考えておくとよいでしょう。例えば:

  • 月給20万円の従業員 → 毎月約3万円の事業主負担
  • 月給30万円の従業員 → 毎月約4.5万円の事業主負担
  • 月給40万円の従業員 → 毎月約6万円の事業主負担

【補足】社会保険料は標準報酬月額に上限があるため、非常に高給与の従業員でも負担額に上限があります。

【実例計算】個人事業と法人での社会保険負担額の比較

家族3人で事業を行うケースで、個人事業と法人の社会保険負担額を2025年最新の料率で具体的に比較してみましょう。この比較により、事業形態選択による実質的な「コスト差」が明確になります。

条件設定(家族経営の事例)

  • 事業主/社長A:月給70万円
  • 配偶者B:月給30万円
  • 子C:月給50万円
  • 業種:一般的な小売業(適用除外業種ではない)
  • 従業員数:上記3名のみ

社会保険料負担額の詳細比較

対象者法人の場合個人事業の場合
事業主/社長A
(月給70万円)
健康保険:34,650円
介護保険:6,055円
厚生年金:64,050円
小計:104,755円
非加入
(国民健康保険・国民年金は自己負担)
配偶者B
(月給30万円)
健康保険:14,850円
介護保険:2,595円
厚生年金:27,450円
小計:44,895円
非加入
(国民健康保険・国民年金は自己負担)
子C
(月給50万円)
健康保険:24,750円
介護保険:4,325円
厚生年金:45,750円
小計:74,825円
非加入
(国民健康保険・国民年金は自己負担)
毎月の事業主負担224,475円0円
年間事業主負担額2,693,700円0円

法人と個人事業の実質的な差額

  • 月間差額:224,475円
  • 年間差額:2,693,700円
  • 10年間の累計差額:26,937,000円

法人として事業を行うと、この例では毎月約22.4万円、年間で約269万円もの社会保険料負担が発生します。10年で約2,694万円にも達するこの差額は、事業形態を選択する際の大きな判断材料となります。

【注意点】個人事業の場合でも、事業主や家族は国民健康保険・国民年金に加入する必要があります。ただし、これらは事業経費ではなく個人負担となります。

【まとめ】個人事業主の社会保険加入の判断ポイント5つ

社会保険には加入者の生活保障を手厚くするメリットがある一方、事業主にとっては大きな経済的負担となります。ここでは、個人事業主が社会保険加入を判断する際の重要ポイントをまとめます。

1. 個人事業主の社会保険加入義務の基本ルール

  • 従業員4人以下:社会保険加入義務なし(任意加入可能)
  • 従業員5人以上:原則として社会保険加入義務あり
  • 適用除外業種:農業、漁業、旅館業、理美容業、法務など特定業種は5人以上でも適用除外
  • 法人の場合:従業員数や業種に関わらず、すべての法人に加入義務あり

2. 社会保険加入のメリット・デメリット

メリット:

  • 従業員の福利厚生が充実し、人材採用・定着に有利
  • 厚生年金は国民年金より将来の年金額が高くなる可能性
  • 傷病手当金や出産手当金など手厚い保障がある

デメリット:

  • 事業主負担が月給の約15%と高額(年間で数百万円の負担も)
  • 加入手続きや算定基礎届など事務負担が増える
  • 従業員の手取り額も減少する(社会保険料の半額は従業員負担)

3. 法人成りを検討する際の社会保険料負担の考慮点

  • 法人成りすると社会保険加入が義務化される
  • 役員報酬も社会保険の対象となる
  • 年間数百万円の追加コストが発生する可能性がある
  • 税金面のメリットと社会保険料負担を総合的に判断する必要がある

4. 社会保険料を適正に管理する方法

  • 役員報酬や給与設計を社会保険料も考慮して最適化
  • 賞与の支給方法や時期を工夫する
  • 法律の範囲内で適切な節税・社会保険料対策を行う
  • 専門家(社会保険労務士・税理士)のアドバイスを受ける

5. 今後の社会保険制度の動向に注意

  • 社会保険の適用拡大が段階的に進められている
  • 将来的に個人事業主の加入条件も変更される可能性がある
  • 定期的に最新情報をチェックすることが重要

事業形態の選択や社会保険加入の判断は、単なるコスト比較だけでなく、事業の将来性や従業員の働きやすさなど多角的な視点で検討すべき重要な経営判断です。不明点があれば、社会保険労務士や税理士などの専門家への相談をおすすめします。

個人事業主の税金や経費計算をラクにする会計ソフトの導入も検討してみてください。社会保険料計算や節税にも役立ちます。

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