「決算前に節税対策で車を買おうかな」 「中古のベンツが節税に効果的って本当?」
会社の税金や個人事業税を減らそうと考えたとき、よく候補に挙がるのが「車の購入」です。しかし、決算直前に慌てて新車を買っても、期待していたほどの節税効果が得られないケースが多いのをご存知でしょうか?
この記事では、車購入の節税効果の真実と、なぜ中古ベンツのような高級車が節税に適しているのかを、会計・税務のプロの視点から徹底解説します。
車はすぐに経費にならない理由
「車を購入したら、その金額がまるごと経費になる」と思っている方は多いのですが、実はそうではありません。
会計上、高額な資産を購入したときには、支払った金額をすぐに全額費用として計上するのではなく、「減価償却」という方法を用いて、数年にわたって少しずつ費用化していきます。
これが、決算直前に車を購入しても節税効果が薄い最大の理由なのです。
減価償却の基本
減価償却とは?
減価償却とは、車や建物などの高額な資産が、長期間にわたって事業に貢献することを前提に、その取得費用を使用可能期間(耐用年数)にわたって分配して費用化する会計処理のことです。
減価償却には以下の目的があります:
- 費用と収益の対応: 資産が生み出す収益と、その資産のコストを同じ期間に対応させる
- 資産価値の減少反映: 時間の経過や使用による資産価値の減少を会計上反映させる
- キャッシュフローの改善: 一度に大きな支出として計上せず、税負担を平準化する
減価償却の計算方法
減価償却の計算には主に「定額法」と「定率法」の2つの方法があります:
定額法: 毎年同じ金額を償却する方法
年間償却額 = (取得価額 - 残存価額) ÷ 耐用年数
定率法: 初年度の償却額が大きく、年々減少していく方法
年間償却額 = 未償却残高 × 定率法の償却率
多くの企業や個人事業主は、初年度の経費計上額が大きい定率法を選択します。ただし、個人事業主が定率法を選択する場合は、税務署に「所得税の減価償却資産の償却方法の届出」を提出する必要があります。
📌 定率法を使うには事前の届出が必要です
個人事業主が定率法による減価償却を希望する場合、「所得税の減価償却資産の償却方法の届出書」を所轄税務署に提出する必要があります。
👉 届出書(国税庁PDF)はこちら
新車購入の節税効果
新車は基本6年間で費用化
普通自動車(軽自動車以外)の法定耐用年数は原則として6年です。つまり、新車を購入した場合、その費用を6年間かけて少しずつ経費として計上していくことになります。
例えば、240万円の新車を購入した場合:
- 定額法なら年間40万円(240万円÷6年)が6年間にわたって経費計上される
- 定率法では初年度の経費計上額が大きく、年々減少(詳細な計算は後述)
決算月購入の効果は更に小さい
さらに、減価償却は購入した月から開始するため、決算直前に車を購入すると、初年度に経費計上できる金額はさらに小さくなります。
例えば、12月決算の会社が12月に240万円の新車を購入した場合:
240万円 ÷ 6年 × 1/12か月 = 約3.3万円(定額法の場合)
わずか3.3万円しか初年度の経費にできず、節税効果はごくわずかなのです。
中古車の節税メリット
ここからが本題です。節税効果を高めるには、新車よりも中古車、特に「4年落ち」以上の中古車を選ぶべき理由をご説明します。
中古車の耐用年数計算
中古車の耐用年数は、その車の使用年数(いわゆる「〇年落ち」)によって変わります。計算方法は次の通りです:
①耐用年数を過ぎている中古車の場合(6年以上経過):
新車の法定耐用年数(6年) × 0.2 = 中古車の耐用年数(1.2年)
※計算結果が2年未満の場合は「2年」となるため、6年落ち以上の中古車の耐用年数は一律「2年」です。
②耐用年数の途中にある中古車の場合(1〜5年経過):
新車の法定耐用年数(6年) - 経過年数 + 経過年数 × 0.2 = 中古車の耐用年数
例:4年落ちの中古車の場合
6年 - 4年 + 4年 × 0.2 = 2年 + 0.8年 = 2.8年
※小数点以下は切り捨てるため、耐用年数は「2年」となります。
つまり、4年落ち以上の中古車は、すべて耐用年数が2年になるのです。
なぜ中古のベンツが節税に効果的なのか
中古車、特に中古の高級車(ベンツなど)が節税に効果的といわれる理由は主に3つあります:
1. 短期間で費用化できる
前述の通り、4年落ち以上の中古車の耐用年数は2年です。新車の6年に比べて、はるかに短期間で費用化できるため、早期の節税効果が期待できます。
2. 高額でも残存価値が高い
ベンツなどの高級車は、中古車市場でも高い価格を維持する傾向があります。そのため:
- 購入時の金額が高額→大きな経費計上が可能
- 売却時も比較的高額で売れる→資産価値の大幅な目減りが少ない
3. 定率法の恩恵が大きい
法人や届出をした個人事業主が利用できる定率法では、耐用年数2年の場合、償却率が100%になります。これは購入初年度に全額を経費計上できることを意味します。
例えば、300万円の4年落ち中古ベンツを購入した場合:
- 初年度: 300万円×100% = 300万円(全額経費計上可能)
- 2年目: 0円(すでに全額経費計上済み)
節税効果を最大化する具体的戦略
最適な「4年落ち高級車ローテーション戦略」
節税効果を最大化するために、多くの税理士が推奨するのが「4年落ち高級車ローテーション戦略」です。具体的な流れは次の通りです:
- 1年目: 4年落ちの高級車(例:ベンツ)を300万円で購入し、定率法で全額経費計上
- 2年目: 前年に購入した車を250万円程度で売却(売却益は課税対象)
- 2年目: 新たに別の4年落ち高級車を300万円で購入し、全額経費計上
- 以降: このサイクルを繰り返す
この戦略のメリット:
- 毎年300万円の経費計上が可能
- 1年ごとに新しい車に乗り換えられる
- 売却時の損失は最小限(高級車は価値が比較的安定)
注意点とリスク
この戦略には以下の注意点があります:
- 事業での使用実態が必要: 経費として認められるには、実際に事業で使用している実態が必要です
- 売却益への課税: 減価償却後の帳簿価額より高く売却した場合、その差額は課税対象になります
- 個人事業主の届出: 個人事業主が定率法を利用するには、事前に税務署への届出が必要です
よくある質問
Q1. 個人的にも使用する場合は?
事業と私用の両方で使用する場合、使用割合に応じて経費計上額を調整する必要があります。例えば、事業利用が70%、私用が30%の場合、経費計上できるのは購入額の70%のみです。
Q2. リースとの比較ではどうですか?
リースの場合はリース料全額をその年の経費にできますが、総支払額は購入より高くなる傾向があります。節税メリットとトータルコストのバランスを考慮して選択しましょう。
Q3. どんな車種が節税に最適ですか?
価格と残存価値のバランスを考えると、ベンツやBMWなどの高級車の中でも人気の高いモデルが適しています。特に4〜6年落ちのCクラス、Eクラスなどは選択肢として優れています。
まとめ
- 車など高額な資産は「減価償却」制度により、購入時に一括で経費計上できず、徐々に費用化される
- 新車より中古車、特に4年落ち以上の中古車のほうが短期間で費用化でき、節税効果が高い
- 中古の高級車(ベンツなど)は金額が高く、かつ残存価値も高いため、節税戦略として効果的
- 4年落ちの高級車は耐用年数が2年で、定率法を適用すれば初年度に全額経費計上可能
- 定率法適用には個人事業主の場合、事前の届出が必要
適切な節税対策は、一時的な出費を減らすだけでなく、長期的な事業成長のための資金を確保することにもつながります。ただし、節税目的だけで高額な車を購入するのではなく、事業における必要性や総合的なコストパフォーマンスを考慮して判断しましょう。
また、具体的な節税戦略を実行する前に、必ず税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
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