本来会計上、費用と収益を対応させて正しく期間損益を計算しなくてはならないとされています。
本来、1年分の経費を前払いした場合、期間に対応する部分を経費として計上し残りは「前払費用」として資産計上して翌期以降の対応する期間に資産を取り崩して経費かするのが基本となります。
では、なぜ1年分の前払費用を支払い時に経費として計上することができるのか確認していきましょう。
短期前払費用とは
冒頭でも書いた通り、本来費用と収益は対応させて計上しなければならない。というのが会計の原則です。(費用収益対応の原則)
ですが、一方会計には重要性の乏しいものは本来の厳密な会計処理によらず、他の簡便な方法による処理を行うことも認められています。(重要性の原則)
この重要性の原則の立場から支払った日から1年以内にサービスの提供を受けるものに関しては、要件を満たすことで支払った期に全額損金(費用)として計上することが認められています。
短期前払費用の要件とは
- 一定期間の契約に従って継続的に提供を受けていること
(等質等量のサービスを契約期間中継続に提供されている物)
=毎月サービスの内容に変化がある、毎月金額が変わるものはNG - 支払日から1年以内に受ける役務の提供の対価であること
=1年分を超える支払いはNG - 翌年以降、時の経過に応じて費用化されるもの
- 現実にその対価として支払いを行ったもの
=実際に支払いを済ませる、未払計上はNG - 継続的に支払時に経費として処理する事
=年払い、月払いを毎年変更するのはNG
以上の要件を満たす費用が「短期前払費用の特例」として経費に計上することができます。
短期前払費用の対象となる主なもの
- 地代家賃の前払い
- 保険料の前払い
- リース料の前払い
12月決算の会社の場合、契約を年払いに変更したうえで、12月の末日に翌1月分から翌12月分の家賃等の支払いをすれば全額経費として計上することができます。
短期前払費用にならないもの・注意点
特定の時期に特定のサービスを受けるためにあらかじめ支払う前払金はこの短期前払費用の特例を受けることは出来ませんので注意しましょう。
以下、短期前払費用の特例で費用計上できない主な例を解説いたしますのでご参考ください。
- 従業員等の給料を前払いした場合
たとえ毎月の支払金額が固定の人に1年分の給料を前払いするとしても、給料に対する対価は毎月等質等量なものとは言えないため経費に計上することは出来ません。 - もともと月払いで契約していた家賃の支払いを事前に契約変更しないで勝手に年間払いした場合
地代家賃の短期前払費用を適用するには、事前に契約を年払いにしておく必要があります。 - 12月決算の会社等が11月に翌1月から12月分の1年分の家賃を前払いした場合
役務の提供期間翌(翌1月から12月)が支払時期(11月)より1年を超えている為、短期前払費用の適用を受けることは出来ません。
この場合は、12月末日に払い込みをするように注意しましょう。 - 翌年分の税理士等の報酬を当期末に1年分前払いした場合
税理士等の報酬は、等質等量のサービスとは言えないため短期前払費用の適用を受けることは出来ません。 - 翌期に放送されるTVCM等の広告費の前払いをした場合
特定の時期に放映・掲載される広告は継続的に提供されるサービスとは言えないため短期前払費用の適用を受けることは出来ません。